iPS細胞や組織幹細胞を用いて失われた組織や臓器を回復する再生医療は、我が国の威信をかけた最重要研究課題の一つであるが、その実現には細胞調節施設(CPC)の整備や細胞組織工学的技術の開発など、解決すべき課題も多い。歯科における再生医療は、①対象となる組織が顎骨、粘膜、唾液腺など、大きさや機能が限られている、②アパタイトやコラ-ゲン膜等の生体材料が既に実用化されている、③頬脂肪体、歯髄など、可塑性の高い多彩な細胞ソースが豊富であるなどの特徴をもつ。そこで本研究では、顎口腔領域の組織をより早期に再生させるための新技術基盤の確立を目的とした拠点を形成することにより、①手術室で完結する組織再生医療の基盤構築、②生体材料と幹細胞を含む細胞によるハイブリッド型再生医療の実現化、そして③顎口腔領域の実用可能な細胞ソースの同定ならびに増殖・分化誘導法の開発を行う。これはCPCなどの大規模施設を必要としない次世代の再生医療基盤構築に不可欠な先駆的研究としての意義をもつ。
上條 竜太郎(昭和大学顎口腔組織再生医学研究センター)
代田 達夫(顎顔面口腔外科学・教授)
「脂肪幹細胞と生体材料を用いた顎顔面組織欠損に対する手術室完結型再生医療」
美島 健二(口腔病理学・教授)
「間葉系幹細胞の免疫調節機能を用いた唾液腺炎症性疾患治療法の開発」
宮﨑 隆(歯科理工学・教授)
「表面改質チタンによる再生硬組織の分子構造とバイオメカニクス」
馬場 一美(歯科補綴学・教授)
「新規セラミックスならびに神経堤細胞を用いた新規骨再生法の開発」
高見 正道(歯科薬理学・教授)
「生理活性物質含有マテリアルを用いた幹細胞制御と硬組織再生方法の開発」
井上 富雄(口腔生理学・教授)
「切断末梢神経再生の分子メカニズムと機能回復の評価システムの構築」
岩佐 文則(歯科補綴学・講師)
「幹細胞の維持および分化を制御するニッチ様担体の開発」
上條 竜太郎(口腔生化学・教授)
「顎口腔組織の神経堤由来細胞を応用した骨再生法の開発」
山本 松男(歯周病学・教授)
「microRNAによる組織幹細胞の骨芽細胞・歯根膜細胞分化誘導に基づく新たな再生療法への挑戦」
飯島 毅彦(歯科麻酔科学・教授)
「再生組織の増殖・分化を制御するアポトーシス誘導機構の解明」
山口 徹太郎(歯科矯正学・准教授)
「ヒトゲノム解析による歯の再生に関与する包括的遺伝子同定」
鈴木 規元(歯内療法学・准教授)
「歯髄幹細胞の修復象牙質産生に関与する因子の解明」