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これまでの大型教育研究プロジェクト


「骨と軟骨の発生と成長に及ぼす無重力の影響に関する研究」
 宇宙開発事業団(NASDA) ふわっと’92(FMPT)

 1992年、日本初の本格的宇宙実験が米国のスペースシャトル「エンデバー」を用いて実施された。本学歯学部が提案した、ニワトリ受精卵を用いた「骨と軟骨の発生に及ぼす無重力の影響に関する研究」がライフサイエンスに関する12のテーマのひとつとして採択された。無重力環境下におけるヒトの身体の重大な変化にひとつに骨からのカルシウムの溶出によって骨が弱くなることがあげられる。本プロジェクトの目的は、無重力下における骨の形成を綿密な準備と予備実験の末、受精後7日および10日齢で打ち上げられた卵は、8日間のフライトの後、それぞれ、10個および9個が生きて地球に戻り、すべて正常に羽化した。一方、受精後0日齢で宇宙に打ち上げられた卵は10個中1個のみが生きて地球に戻って来た。生還した受精0日齢の卵は、羽化することなく24日目に16日齢の大きさで死亡した。この実験から、無重力は初期発生に影響するものの、重力が生命の誕生そのものに必須とは言えないことが示された。


 「顎口腔機能障害の発症機序究明とその機能回復に関する先進的研究」
  平成17年度〜平成21年度 文部科学省 ハイテク・リサーチ・センター

 咀嚼、嚥下などの顎口腔機能は、加齢や種々の顎口腔疾患により障害を受け低下するが、その発症機序にはいまだ不明な部分が多く、発症メカニズムに基づく効果的な治療法の開発が期待されている。また、従来の治療法ではこれらの機能が十分に改善されない症例も多く存在する。このような症例に対してはリハビリテーション治療が行われるが、顎口腔機能に対するリハビリテーション治療はいまだその歴史が浅く、基礎歯学と臨床歯学の連携が取れた科学的な基盤構築が必要である。そこで本学歯学研究科では、加齢・種々の疾患等による顎口腔機能の低下が患者のその後のQOLに大きく影響する点に注目し、「顎口腔機能障害の発症機序究明とその機能回復に関する先進的研究」をメインテーマとする研究プロジェクトを計画した。本プロジェクトでは顎口腔機能障害発症機序の解明とそれに基づく診断・治療法の開発、そしてリハビリテーション歯学の構築までを有機的に連携させ、他分野の先進技術を積極的に応用して、顎口腔機能障害の先進的治療体系の確立を目指し、(1)顎口腔機能障害発症機序の分子・細胞生物学的究明、(2)先端技術を応用した顎口腔機能障害の診断・再建法の開発、(3)新しいリハビリテーション歯学の構築、の3つのサブプロジェクトを設立し、それぞれ具体的な課題を掲げて研究を進めた。
その結果、サブプロジェクト(1)では顎口腔機能障害発症機序について、癌の悪性化マーカー遺伝子、フリーラジカル種による軟骨変性および細胞分化促進作用、オステオポンティンの破骨細胞分化・活性化への関与および同細胞の体内動態、新規骨吸収抑制剤や代謝性骨疾患モデルでの効果、個体発生における遊走系細胞の役割、咬筋運動ニューロンの膜特性および日齢と興奮性の関連、プラークバイオフィルム形成における菌体酵素の役割と食品による形成抑制等に関する研究成果が得られた。また、サブプロジェクト(2)では、歯と歯周組織を保存する研究、咀嚼を維持するために適切な口腔内環境の評価、口腔の形態・機能を脅かす疾患に関する研究、そして歯と歯周組織の再生医療に関しての研究成果が得られた。さらに、サブプロジェクト(3)では新しいリハビリテーション歯学の構築を目指し、顎顔面領域三次元モデル、コーンビームCTと個体別三次元有限要素解析による顎顔面領域の三次元的評価方法の確立、四次元MRI立体空間動画像での咀嚼・嚥下解析法の確立とヒューマノイド型ロボット開発向けのデータ収集、近赤外線分光法による機能遂行脳活動検出法の確立等、新技術の開発に成功した。


 「分子的理解に基づいた口腔癌の先端的研究 —発症メカニズムの解明からQOLの向上を目指した機能リハビリテーションまで—」
  平成20年度〜平成24年度 文部科学省 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

 本研究は、口腔癌患者一人ひとりについての「発症-診断-治療-機能回復-機能維持」までを視野に入れた包括的な癌攻略に関する先端的研究を企画したもので、本研究グループを拠点として、その成果が広く地域医療に取り込まれ国民の福利厚生の向上の一翼を担うことを目標とした。そのために、(1)前癌病変を含む口腔癌の発症メカニズム解明と口腔内環境の関連解明による早期診断システムの確立、(2)分子的理解に基づく治療体系の確立と機能障害予測に基づく再建法の開発、(3)口腔癌治療後の顎口腔機能障害発症機序に基づいた包括的リハビリテーションの体系構築のプロジェクトを有機的に連携することで口腔癌患者の生存率向上と術後QOLの改善、快適な社会生活復帰を目指した。
 サブプロジェクト(1)では、口腔粘膜上皮異型性の形態学的評価、前癌病変の発現タンパクの解析、癌幹細胞マーカーのスクリーニングの結果を基に、主観の介在しない前癌病変判定法を開発した。また口腔癌と免疫システムの相互作用の解析により発症メカニズムとその抑制方法を開発する基盤を整備した。さらに癌浸潤機構におけるリゾリン脂質の役割の解明、MPR画像診断による軟組織進展範囲の診断制度の向上を図った。サブプロジェクト(2)では、口腔癌早期発見の指標ならびに抗癌剤感受性・放射線抵抗性の原因となるタンパクを明らかにし、分子標的治療体系確立の為の基盤を整備した。また、リンパ管新生に着目した口腔癌増殖・転移機構を示した。癌摘出後の顎骨再生のために、BMP-2の骨再生メカニズムの解明、リン酸カルシウム・コラーゲン複合体を用いた新たな顎骨再建用生体材料の開発を行った。さらに、機能障害を視野に入れた再建法を確立するために、口腔癌治療に伴う口腔乾燥症、構音ならびに咀嚼障害の予測モデルを構築した。サブプロジェクト(3)では、口腔乾燥と嚥下障害が生じやすい口腔癌患者を対象とした、高感度赤外線サーモグラフィを用いた摂食・嚥下診断法を開発した。合わせてコーンビームX線CTを用いて顎骨の3次元的形態解析ならびに力学的解析を行い、癌摘出後の咬合再構築を生体力学的観点からシミュレーションできるシステムを構築した。また、癌治療中の患者の口腔内環境改善を目的とした超音波照射法に着目し、そのバイオフィルム除去効果を示した。さらに、口腔癌術後再建治療の包括的評価を合理的に行うための質問票を開発し、その妥当性と有用性を実証した。


 「デンタルイノベーションを目指した集学的研究拠点形成 —アンチエイジングに貢献する新たな付加価値の創生—」
  平成22年度〜平成26年度 文部科学省 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

 日本は世界一の超高齢社会を迎えようとしている。平均寿命は世界最高水準であるが、要介護者の増加やそれを支える勤労世代への負担が益々大きな問題になることが予想される。この問題は、QOLにも関わるため、全領域の研究が集結し対応する必要がある。長寿を全うするだけでなく、高齢者が健康で自立した生活を育むため、アンチエイジングの研究遂行が必須である。口腔は、消化器と呼吸器の両方の入り口であり、話すことや人間らしい表情を作る上でも重要な臓器で、その形態・機能の損失は全身のエイジングと密接している。本事業では、超高齢社会における生活を豊かにするために、昭和大学歯学部を中核に口腔からのアンチエイジング研究を自立的・連続的に推進し、歯科が人の生活機能全体に関わるデンタルイノベーションの実現を目指した。
 まず、顎口腔のエイジングを分子装置、咀嚼・嚥下運動、神経機構、形態変化、診断、生活習慣、エピジェネティクス、遺伝子オントロジーおよび口腔常在細菌叢など、多様な角度から解析を行い、硬組織代謝に関わる新しい活性酸素種の産生メカニズムを提唱したほか、咀嚼や審美性の回復を行った後の極めて小さい変化も検出できるシステム基盤を築いた。また、自己脂肪幹細胞を分化誘導する外部制御により、再生医療の可能性を示した。口腔癌においては長鎖noncoding RNAが癌の発生や形質維持に深く関与することを初めて明らかにした。さらに、独自に開発した骨形成誘導方法を用いて歯周病による骨形成抑制機序を解明したことなど、顎口腔形態と機能とエイジングの関係について極めて重要な知見が得られた。
 さらに、臨床的実用性を重視し、チタンインプラント表面改質、誤嚥の診断法と予防法、新インプラント再生補綴治療、超音波照射口腔内洗浄システム、歯科補綴技術開発、顎顔面加齢制御、歯科画像診断および新しいバイオマテリアル開発を検討し、僅かな誤嚥を検出するのに重要となる嚥下音発生タイミングを見出したほか、利便性の高いインプラント治療開発によりオッセオインテグレーションを向上させることに成功した。また、高齢者の口腔乾燥を改善する方法を開発するとともに、顎口腔の複雑な形態と機能を回復させるためのバイオマテリアルとして、リン酸カルシウムインプラント、およびチタンインプラントを欠損部形態に適合した形で製造する技術を開発したことは、エイジングの影響を大きく受ける歯科治療にとって、画期的なブレイクスルーである。


 「次世代型顎口腔組織再生医療の研究開発拠点形成」
  平成24年度〜平成28年度 文部科学省 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

 近年、再生医療が医療の現場に導入されつつあるが、広く普及するまでには解決すべき課題が未だ多く存在する。顎口腔領域は、食べる、味わう、話すなど、人の生活全体に深く関わる器官であり、その欠損は患者のQOLに多大な影響を及ぼすことから、より効果的に機能回復させることが急務で、顎口腔領域における再生医療の基盤技術開発が期待されている。また、顎口腔領域は①再生対象となる組織が顎骨、粘膜、唾液腺など、大きさや機能が限られている、②アパタイトやコラ-ゲン膜等の生体材料が既に実用化されている、③頬脂肪体、歯髄など、可塑性の高い多彩な細胞ソースが豊富であるなどの特徴をもち、組織再生の実現可能性が高い。そこで本研究では、顎口腔領域の欠損組織をより早期に再生させるための新たな技術基盤の確立を目的とした、次世代型再生医療を提案する研究拠点を形成すべく、(1)「手術室で完結する組織再生医療の基盤構築」、(2)「生体材料と幹細胞を含む細胞によるハイブリッド型再生医療の実現化」、そして(3)「口腔領域の実用可能な細胞ソースの同定ならびに増殖・分化誘導法の開発」の3つのサブプロジェクトを組織し、集学的研究を遂行する。つまり、細胞ソースに関する分子・細胞レベルの基礎研究から早期臨床応用の実現性が高い技術開発までの一貫した研究を実施することで、本研究拠点から再生医療研究の成果を世界に向け発信することを目指している。
 これまでに、サブプロジェクト(1)では、ラット脂肪幹細胞(ADRCs)の効率よい単離方法を確立し、単離した脂肪細胞が多分化能を有し、移植に有利なスフェロイドを形成することを確認した。加えて、マウスの唾液分泌障害モデルにおいても、ADRCsの移植が奏功することを示し、細胞治療への有効性を明らかにした。サブプロジェクト(2)では、チタンやナノ複合化セラミックスなどの生体材料における表面性状が骨形成能に与える影響を解析し、さらに神経堤細胞や骨誘導蛋白(BMPs)を応用するハイブリッド型の骨再生法を確立することが出来た。また、生体材料表面とタンパク質の相互作用を測定することにより、生体親和性ポリマー表面を設計する解析モデルを構築し、表面性状の特性評価への応用を可能にした。サブプロジェクト(3)では、神経堤由来細胞、骨芽細胞、エナメル芽細胞、軟骨芽細胞および歯髄幹細胞といった口腔内から採取可能な幹細胞の機能解析が進められ、これらの細胞が骨再生療法をはじめとした口腔機能の回復を可能にする細胞ソースとして有効である分子基盤を解明することが出来た。
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  「口腔機能維持・回復のための集学的研究開発拠点の形成」
   平成26年度〜平成30年度 文部科学省 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

 口腔は、歯や舌をはじめ、顎骨、口蓋、粘膜、唾液腺、神経などで構成され、これらが協調的に機能することによって、咀嚼・嚥下や発声、摂食などが可能となる。セルフケアが困難な後期高齢者や要介護者、口腔がん患者などは、これらの組織の崩壊により歯周病や誤嚥性肺炎などを発症するリスクが高まるほか、顎・口蓋の形態異常は、咀嚼・発声不全だけでなく、無呼吸症候群などの全身性疾患にも関与する。近年注目されている「口腔ケア」は、口腔の衛生管理やリハビリテーションにより、口腔機能を維持・回復させることを目的としたものである。しかし、一度崩壊した口腔機能を元通りに修復するのは、最新の医療を以てしても困難なことが多い。そこで我々は、相互に関連する基礎と臨床の研究者が連携することによって、口腔組織の機能とその破綻について解明し、次世代を見据えた新たな臨床技術の開発を目指す。すなわち、病理学研究者は加齢に伴う唾液腺萎縮の変化を解析し、それが口腔疾患や補綴装置の汚染に及す影響について歯科補綴学研究者とともに解明する。細菌感染による口腔環境の増悪については、微生物学研究者が粘膜免疫機能について解析し、その結果に基づき、口腔衛生研究者が口腔ケアを検討する。また、歯科薬理学と医学部腫瘍内科学の研究者の連携により、顎骨壊死など薬物誘導性の口腔疾患の発症機序を解明する。生理学研究者は、神経による咀嚼制御機序を解析し、その結果に基づいて口腔リハビリテーション研究者が咀嚼・嚥下機能検査法の開発を試みる。生化学と血液内科学の研究者は、口腔粘膜炎と全身性疾患との関係解明に臨む。解剖学研究者は、加齢にともなう顎口腔形態と歯の喪失について組織学的解析を実施し、歯科矯正学研究者とともに顎・口腔の応力とひずみの変化について検討する。このように、基礎と臨床の連携により集学的な研究を実施することで、口腔機能の維持・崩壊機序を解明し、新たな医療技術を開発することを目指している。 
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  「唾液腺機能障害の分子機構解明と機能回復を目指した先端的研究」
   平成24年度〜平成26年度 学術振興資金、日本私立大学振興・共済事業団

 口腔乾燥症は、潜在的患者数800万人といわれており、齲蝕および摂食嚥下障害などの罹患率の上昇に加え、誤嚥性肺炎などの原因にもなる。また、その重症例では著しいQOLの低下をきたすが、治療法は人工唾液の利用などの対症療法のみである。本研究は、唾液腺研究の専門家と関連分野の研究者を加えた組織で構築され、多彩な分野の先端技術を応用して、唾液腺機能回復を目指した研究を多角的に推進した。その結果、唾液腺の発達に重要な役割を果たす転写因子および細胞内外のシグナル経路を解明し、さらに口腔保湿剤の有効性とその粘度の関係を明らかにした。


  「ITを活用した超高齢化社会に対応できる歯科医師の養成」
平成24年度〜平成28年度 文部科学省 大学間連携共同教育推進事業

 超高齢社会の到来により、歯科を受診する患者の「基礎疾患の有病率・服薬率」が増加している。本事業では「患者中心の安全な歯科医療を実践」するために、全身の状態を把握し、歯科医療を行う際に基礎疾患に留意できる歯科医師の養成が必要である。また、高齢者には高頻度に口腔乾燥症(ドライマウス)がみられる。これは、口腔内の痛みや味覚障害を合併し、QOLを低下させるばかりではなく、誤嚥性肺炎の原因にもなる。服用薬剤や糖尿病などの全身疾患との関連も深く、口腔乾燥症の原因を理解し、治療を実践できる歯科医師の養成が待たれる。さらに現在歯科医療は、診療所に来院する患者を中心に提供されているが、超高齢社会の到来とともに要介護高齢者が増加し、在宅歯科医療(施設を含む)の充実が求められている。
 そこで本事業では、ITを活用した教育センター(3大学と歯科医師会)において、
(1)能動型学習資源の改良[e-learningVPシステム・電子ポートフォリオ](2)ITを活用した超高齢化社会に対応した歯学教育プログラムの開発、(3)教育目標の到達度の評価、(4)ITを活用した歯学教育プログラムの改良に取り組み、地域医療、多職種連携のチーム医療を理解し、専門的口腔ケアを実践できる歯科医師の育成を目指す。


デジタルラボラトリーの開設

 平成27年、昭和大学歯科病院内に、世界の主要なデジタル歯科システムを整備したデジタルラボが開設された。口腔内スキャナーから、仮想咬合器、クラウン・インプラントCADシステム、CAMシステムまで世界最新鋭の施設が設置され、わが国の歯学部では最大級のデジタルラボである。
 昭和大学歯学部では、世界初の患者ロボット「昭和花子」や対話式医療面接システム「Virtual Patient」をはじめ、さまざまな面でのデジタル化を推進しており、今後は学生の基礎実習ならびに臨床実習においてデジタルラボを積極的に活用し、来るべきデジタル歯科時代において指導的役割を担う歯科医師の育成を目指している。